平成28年度 都中美 夏季研修 報告

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「美術教育と社会 ~つながり・ひろがり・生成~」

1日目:『美術館を活用した対話型鑑賞教育の研修』
期日:平成28年7月25日(月) 9:30~16:45
場所:東京国立近代美術館

2日目:『生徒作品持ち寄りによる「生活を豊かにする造形や美術の働き」について協議・発表を行う研修』
期日:平成28年8月2日(火) 9:00~16:45
場所:板橋区立板橋第五中学校

平成28年度の夏季研修会は7月25日・8月2日の2日間、東京国立近代美術館と板橋区立板橋第五中学校にて、本年度の都中美大会のテーマと関連付けた内容で実施されました。また第4ブロック板橋大会のプレ研究としても位置付けられています。

今年も連日猛暑日が続く中、1日目の参加者50名、2日目は約80名と、大勢の方に参加していただきました。

本研修会では、1日目は対話による鑑賞とグループ協議、美術館に来館した中学生にトークラリーが行われ、2日目は生徒作品を持ち寄ってのグループ協議と、文部科学省文科省教科調査官の東良雅人氏の講演が行われ、2日間にわたって大変充実した内容となりました。

1日目 7月25日(月)
『美術館を活用した対話型鑑賞教育の研修』
講師:東京国立近代美術館
主任研究員 教育普及担当一條 彰子 氏

指導・講評:元府中市立第五中学校 校長 中村 一哉 先生

■ ご挨拶

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まずはじめに、都中美会長の茜谷佳世子校長先生からご挨拶がありました。次に、東京国立近代美術館 主任研究員 一條彰子様からご挨拶がありました。続いて全造連委員長の大野正人校長先生から、都中美の研究について説明がありました。最後に、都中美研究局長の長尾菊絵先生から、研修の流れと意図について説明がありました。「都中美の研修」についての詳細はPDF版をご覧ください。

①講義『対話で鑑賞をふかめよう-中学生へのトークラリー実践』

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講師:東京国立近代美術館 主任研究員 一條 彰子 氏

美術館を活用した鑑賞教育とは、中学校学習指導要領美術の内容の取り扱い2(2)「美術館・博物館等の施設や文化財などを積極的に活用するようにすること」に依る。美術館には、本物の作品がある、作品に関する研究が蓄積されている、専門スタッフ(学芸員)がいるという特性がある。鑑賞とは、作品をよく観察し、感じたこと考えたことから知識や経験をもとに自分なりに解釈する行為であり、自分なりの意味や価値を作り出していく学習である。対話による鑑賞とはファシリテーター主導のグループによる学びである。そこには説明し合い、批評し合う関係が生まれる。中学生へのトークラリー実践では、目的として教員はファシリテーションスキルの獲得、生徒は自分なりの意味・価値を見出すことが、それぞれある。背景にはVTS (Visual Thinking Strategy…対話型鑑賞教育)をベースに必要な作品情報を与えていく「探求的な鑑賞」がある。

②午前『グループワーク・対話による鑑賞の体験とトークプラン作り』

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約50名の参加者が12のグループに分かれて、美術館の学芸員と都中美の教員によるファシリテーター12名と共に、それぞれグループワークを行いました。対話による鑑賞の体験をしてそれを元に午後のトークラリーに向けてトークプランを立てました。

③午後『中学生のトークラリー』

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午後には150名の中学生が来館しました。4〜6人で25のグループに分かれ、美術館のMAPとストラップ、スタンプカードを受け取りました。100分間の時間内に美術館の27作品の中から、気になったり心惹かれた作品を選んで10分のトークをしながら、次々に回っていきました。

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④グループ発表

12のグループがトークラリーの振り返りを行い、トークラリーの実践と結果、「授業で取り組むとしたらどこを大切にしたいか」について、発表を行いました。

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■指導講評

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元府中市立第五中学校 校長 中村 一哉 先生

指導講評美術館を活用した都中美の研修は15年前に遡り、府中市美術館で始めた。対話型鑑賞は近年の都中美の研修の主要なテーマのひとつになっている。対話型鑑賞は作品と生徒をつなぐもので、情報をただ与えさえすれば良いものではなく、皆でまず観ることがとても大切である。同じ作品を観て共有し、話し合いながら感じ方を広げ深める。それによって視点も変わる。これからもファシリテーターは研修を主体的に受け、各地区で広げてほしい。

■謝辞

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西東京市立明保中学校 矢野 尊久 校長先生

 

2日目 8月1日(火) 『生徒作品持ち寄りによる「生活を豊かにする造形や美術の働き」について協議・発表を行う研修』

講演:文部科学省初等中等教育局 教育課程課 教科調査官  東良 雅人 先生

■ ご挨拶

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まずはじめに、都中美副会長の矢野尊久校長先生からご挨拶がありました。次に、教科研究部担当の増田裕子校長先生から研修の趣旨について説明がありました。最後に、都中美研究局長の長尾菊絵先生から、研修の流れと意図について説明がありました。「都中美の研修」についての詳細はPDF版をご覧ください。

①午前 グループワーク 作品の紹介と、「生活を豊かにする造形や美術の働き」についての協議

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9グループに分かれて自己紹介し、持参した作品の紹介を各自で行いながら、「題材のねらい(身に付けさせたかった力)、「生活を豊かにする造形や美術の働き」を授業でどう意識させるかということに焦点を絞って協議をしました。1時間半という長い時間をかけて作品鑑賞と話をし、お互いの考えを知ることができました。またグループワークで出てきた課題をもとに具体的な手立てを協議し、ワールドカフェでの発表に備えました。

②午後 ワールドカフェ

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午後は30分の作品見学が行われました。その後、各グループが前後半で発表者と移動者の立場になり、9グループ全ての発表を聞き、グループに戻って報告をしました。1時間で全員が協議の内容を共有しました。

■ 講演 「生活や社会と豊かに関わる美術教育の充実について考える ~生活を心豊かにする造形や美術の働きの実感的な理解を深めることを通して~ 」

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文部科学省 初等中等教育局 教育課程課教科調査官   東良  雅人 先生

東良先生からは、具体的な実践例を挙げながら、次のようなお話をしていただきました。

東良雅人先生講評内容(抜粋)

学びの経験と校種の連携、その連続性によって子どもの学びは深まる。学びに向かう姿勢の育成は先生方の指導にかかっている。成長段階に応じて子どもが取る行動を把握し、子どもの気づきのタイミングを見逃さない指導を行うことが必要とされる。

実感、実体験の乏しさ、良いもの価値のあるものとの出会い。子どもたちは見ているようで見ていない。それを気付かせるための仕掛け、視点を我々が与えることが、生活を豊かにする造形や美術の働きを意識させることに繋がる。

教科の特性として、光や色など共通事項を扱うことが大切である。また授業では、子どもたちに五感を意識させる指導をすると良い。

子どもと同じ視線をもち、同じ世界で生きて行くべき。子どもとの関係を意識して教材研究を行うことが必要とされる。同じ世界に生きていることを意識しなければ、子どもの実態に迫ることができない。

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■ 謝辞

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杉並区立井草中学校 大野 正人 校長先生

東良先生の講演の内容を、今後に活用してほしい。2日間の研修は充実したものだった。