(1)育てたい資質や発達段階の観点から
学習指導要領第2学年及び第3学年A表現(1)ア(注※)が示すように、価値的感情をベースに自分らしさとは何かを考え、感じたことを表現したり、自己の内面を象徴化して表現させることは、自己肯定感を高め、質の深い表現を追求させるうえで有効である。これをふまえ、自分の想定した風景や事物と自画像を組み合わせて表現させる本題材を設定した。
@ 自分自身を見つめ直し、「自分らしさ」とは何かを考えながら、自分や他者を肯定し尊重する姿勢を身に付けることができる。
A 観察を深め、対象から受けた感じや発見したことを大切にしながら表現する姿勢を身に付けることができる。
B これまでの学習を基に、さらに観察を深めデッサンに表現することを通し、光と陰や立体感などの描画表現をより深く身に付けさせることができる。
(2)画材・技法について
本題材では、細かいタッチを重ねながら明暗や量感を表現するハッチングを多用させる。これは、表面的、概念的な観察、表現に陥ることを防ぎ、対象を注意深く観察しながら細部まで丁寧に表現させるねらいがある。描画材については生徒にとって馴染み深く、細い描線が持続でき、消しゴムも使える利点を採りシャープペンシルをあえて採用した。ただし芯はB以上の柔らかいものを用意させた。
また、描画に苦手意識をもつ生徒にも表現への意欲を促すために、対象のアウトラインを描写する段階で、輪郭をトレーシングペーパーで転写する方法を採った。これにより、自分にもうまく描写できるという見通しと自信をもたせる効果が期待できる。
※注:学習指導要領美術A表現(1)絵や彫刻などに表現する活動〔第2学年及び第3学年〕
「ア 対象を深く見つめ感じ取ったこと、考えたこと、夢、想像や感情など心の世界をスケッチに表すこと。」ができるよう指導する。
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ア美術への関心・意欲・態度 |
イ発想や構想の能力 |
ウ創造的な技能 |
エ鑑賞の能力 |
評価規準 |
自分を客観的に見つめ、内面的なテーマをふまえ、自分らしさを表すための表現に取り組もうとする。 |
自分らしさを効果的に表現するための画面構成やモチーフ選択を行う。 |
デッサンの技法を生かしながら、自分のねらいに合った表現をする。 |
作者の意図、作品のよさや美しさを味わい、表現上の工夫とその効果について考える。 |
学
習
活
動
に
即
し
た
具
体
の
評
価
規
準 |
導入 |
@自分らしさとは何かを考え、それを表現するための方法に関心をもつ。
Aデッサンの技法の習得に積極的に取り組む |
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@ハッチングの技法上の特性を生かしながら、人物画における明暗や量感の表現を行う。 |
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展開 |
B自分らしさを表現するための素材選びやデッサンの表現に積極的に取り組む。 |
@自分の意図に応じたモチーフを選ぶ。
A効果的な画面構成(人物と背景のレイアウト)につ
いて考える。 |
Aハッチングの技法上の特性を生かしながら、ねらいに応じて人物や背景の明暗や量感の表現を行う。 |
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まとめ |
C自他の作品のよさや美
しさ、工夫点などを味わ
い、その効果について考え
ようとする。 |
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@作者がこめた思いを想像し、造形上のよさや美しさを感じ取る。 |
Aと評価する状態・キーワード |
「描くことを楽しみながら」
「デッサン表現の多様性や美しさに興味を抱き」
「集中力を持続させ」 |
「試行錯誤を重ねながら適切なモチーフ設定やレイアウトを行う」「独創的な」
「すでに学んだ技法や知識を活用しながら」 |
「材料や用具の特性を生かしながら」
「美しく効果的に表現する」
「独創的に活用する」 |
「それぞれの作品のよさ、価値を認め」
「自分なりの解釈や印象を大切に」「深く味わい、想像している」 |
Cと評価する状態・キーワード |
「描くことに関心を示さない」
「なかなか作業に取り組もうとしない」
「集中できない」 |
「画面構成やモチーフ選びに自分なりのこだわりがない(行き当たりばったり)」
「他の表現をそのまま真似ている」 |
「ハッチングの技法を生かせない」「材料や用具を適切に用いることができない」「観察が粗く作業が雑である」 |
「他の作品のよさや工夫点を感じ取れない」 |
Cと評価する生徒への手だて |
@ 個々の生徒理解をふまえ、その生徒の得意なことや趣味嗜好、将来の希望などについて話をし、関連するモチーフを提示してみせる。
A すでに表現できている部分を積極的に評価する。 |
@ 表したい「自分」とはどんな自分なのかを再確認させる。
A 参考作品に見られる画面構成の工夫を考えさせる。
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@ 1年次で学習した基礎立体デッサンを例に、タッチの密度と方向性が、明暗や量感とどのような関係があるのか説明する。
A 少し離れた所から写真と作品を比較させ、印象の違いに気付かせる。 |
@ 問答形式で考えを深めさせる。 |
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ねらい・学習活動 |
評価の
観点 |
評価方法等 |
C評価生徒
への手だて |
導
入 |
第
1
時
〜
3
時
3時間 |
教科書や資料集の自画像作品を見ながら、自分を表現することの意義や自分らしさとは何かについて考える。
今回の題材(背景の事物との組み合わせにより、自分らしい自画像を素描で描く)について理解する。
デッサンの技法(ハッチングによる明暗や量感の表現)について知る。
見本を参考にしながら、デッサン演習課題に取り組む。
課題@ダ・ヴィンチ「白テンを抱く婦人」
課題Aカラバッジョ「果物かごをもつ少年」
課題B教師の自画像 |
ア-@
ア-A
ウ-@ |
・聞く態度
(必要に応じ記録)
・デッサン演習への取り組みの様子
(必要に応じ記録)
・演習作品 |
アー@A
アー@
ウー@A |
課題@
見本A 見本B ワークシート
課題A
見本A 見本B ワークシート
課題B
見本A ワークシート
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自分の胸像をデジタルカメラで撮影する。 |
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|
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展
開 |
第
4
時
〜
1
0
時
7
時
間 |
自分の写真(グレースケール)にトレーシングペーパーを重ね、輪郭線をかたどる。
インターネットを利用し、背景に組み合わせたい風景や事物を、写真素材のサイトから探し、適宜拡大縮小する→グレースケールで印刷する(パソコン室での展開2時間分)。プリントアウトした画像のアウトラインをトレーシングペーパーに写し取る。
画面構成を考えながら、自画像と背景の事物の輪郭をケント紙に転写し、構図を決定する。
レイアウトが終わった段階の生徒作品
.
人物以外のモチーフについても、明暗や量感をどのようにデッサンで表現したらよいか、説明を聞きながら学習する(電子黒板使用)。
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ア-B
イ-@A
ウ-A
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作業の様子(必要に応じ記録)
背景として選んだモチーフと、画面上での構成
作品制作過程(必要に応じ記録)と完成作品 |
アー@A
イー@
イーA
ウー@A |
バラ 樹 ボール
ビル 雲
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ハッチングの技法を用いながら、人物や背景のモチーフの明暗や量感を表現する。 |
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|
|
生徒作品(完成)
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まとめ |
第
11
時 |
自分の作品についてそのねらいや表現上の工夫を発表する。
他の生徒の作品を鑑賞し、作者が作品にこめた思いや表現上の工夫などその良さを味わう。
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アーC
エー@ |
- 聞く態度や発言(必要に応じ記録)
- 鑑賞シート
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エー@ |