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   研修報告 2013/8/3

平成25年度 都中美 夏季研修 報告
「 造形美術教育のダイナミズム 〜 成長と連携 〜 」

期日:平成25年8月1・2日(木)8:30〜16:45
場所:墨田区立両国中学校

※中学校美術Q&Aとの共催

 8月1・2日の2日間で都中美研修会が墨田区立両国中学校にて中学校美術Q&Aと合同で行われました。

 中学校美術Q&A(クオリティ&アクション)とは、北海道の中学校教諭である山崎正明先生が中心となって運営されている、「授業の質の向上と美術教育の価値を伝える行動のための研究会」です。(詳しくは中学校美術ネットのHPをご覧ください。)

 今回の合同研究会は初の試みではありましたが、1日目の参加者は約140名、2日目は約120名と、想像を超える大勢の方に参加していただきました。

 1日目は6つの研究発表と、文科省教科調査官の東良雅人氏の講演が行われ、2日目は6つの実践発表とAction会議が行われ、2日間にわたって大変充実した内容となりました。内容につきましては、以下の紹介と合わせて、研修会の記録(PDF)をご覧ください。

■ご挨拶

 まずはじめに、都中美会長の殿村校長先生、研究局担当の中村校長先生からご挨拶がありました。

  

 次に、中学校美術ネット主催の山崎先生、全造連会長の永関校長先生から、「基調提案」がされました。

  

 続いて、長尾先生から、「都中美の研修」について説明がありました。
「都中美の研修」についてはこちらをご覧ください。

■都中美の研究発表@ (1日目 午前@)
「人にとって心地よい環境をつくろう」〜住まい・自然を含む心地よい住環境のモデル制作〜
八王子市立椚田中学校 主任教諭 畠山真理

 この実践は、住まいや公共・自然など人にとって心地よい環境を住む人の気持ちや機能・美しさなどの観点から考えて構想を練り、板や発泡スチロール、スチレンボードなどの土台の上に様々な素材の特徴を生かして、心豊かな生活環境のミニチュアを表現するというものでした。これまであまり扱われてこなかった生活環境という題材での活動が研究されていて、非常に興味深い内容でした。

 この研究発表に関する詳しい内容は、指導案プレゼン資料(PDF版)をご覧ください。


■都中美の研究発表 (1日目 午前A)
「地球環境について〜私たちが地球のためにできること〜」をテーマとした環境ポスター
大田区立雪谷中学校 主任教諭 堀内有子

 この題材は、生徒に「環境問題」を自分たちの問題として深く考えさせ、メッセージを印象的に伝えるためにどのような工夫があるのかを学ばせながら、見る人に強く伝えることを目指して、表現方法に工夫を重ねたポスターを表現させるというものでした。スタンダードなポスター表現の活動ですが、1時間をかけて環境問題の学習に取り組んだり、公益社団法人日本広告制作協会から外部講師を招いたりして、授業展開にとても工夫がなされていました。

 この研究発表についての詳しい内容は、プレゼン資料(PDF版)をご覧ください。

 また、今回の研究会には、この題材で1時間発想の授業を行った、外部講師の佐藤良仁氏の、お話を聞くこともできました。詳しい内容については、プレゼン資料(PDF版)をご覧ください。

■都中美の研究発表 (1日目 午前B)
「企業との連携から鑑賞教育の広がりを求めて〜ルーブルDNPミュージアムラボとの連携実践報告」
足立区立第一中学校 主任教諭 平岡紀子

 この実践は、美術作品から感じ取る力や思考する力を豊かにし育むことをねらいとして、ルーブルDNPミュージアムラボと連携し、ワークショップや出前授業などで鑑賞活動を行うというものでした。ルーブルDNPミュージアムラボとは、パリ・ルーヴル美術館とDNP大日本印刷が協同で豊かな鑑賞体験を提供することを目的にスタートしたプロジェクトのための研究所です。(詳しくはルーブルDNPミュージアムラボHPをご覧ください。)外部機関との連携で、鑑賞の活動の広がりを感じさせる実践でした。

 この研究発表についての詳しい内容は配布資料プレゼン資料(PDF版)をご覧ください。

 

■実践発表1 (1日目 午後@)
「日本の美術や伝統と文化を学ぶ〜雪松図屏風鑑賞教室から和の表現題材へ〜」
武蔵野市立第六中学校 主幹教諭 中村みどり

 この実践は、三井記念美術館から円山応挙の高精細「雪松図屏風」を借りてきて鑑賞し、その良さや特徴、美しさを感じ取り、四季や花鳥風月をテーマとして、扇や和紙のランプシェードなどに表現するというものでした。高精細「雪松図屏風」とは、綴プロジェクトによって高精細に複製された作品です。(詳しくは綴プロジェクトHPをご覧ください)複製といえども、本物そっくりのものが目の前に置かれて、それを鑑賞するという体験は、人に感動を与えるものであることが感じられました。その後に制作された生徒作品には和の雰囲気が美しく表現されていました。

 この実践発表についての詳しい内容は、プレゼン資料(PDF版)をご覧ください。

 

■実践発表2 (1日目 午後A)
「発見日本の美〜伝統文化の実践を通じ学んだこと〜」
静岡県藤枝市立高洲中学校 教諭 道越洋美

 この発表では、花を教材とし、フラワーアレンジメントと生け花を比較しながら日本の美を鑑賞し、生徒自身が生け花をするための花器を表現する活動が紹介されました。完成した花器には、実際に花を生けて、互いにそれぞれの作品のよさを鑑賞し合うそうです。実際に花を鑑賞したり、生けてみたりする活動は、生徒たちの美意識に大きな変化をもたらすことが期待できる内容でした。

■講演 (1日目 午後B)
「資質や能力をより豊かに育む、中学校美術科の授業づくり」
文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官
国立教育政策研究所研究開発部教育課程調査官 東良雅人 先生

 この講演では、授業作りの考え方ついて、美術の授業の表現と鑑賞、それぞれの活動で育成する子どもの資質や能力に焦点をあてて、以下のようなお話を聞くことができました。

■(幼少期から大学生の時期までの、一人の人の、作品の変化が120枚の画像によってに紹介しながら、)人の成長の連続性の中に中学生という時期がある。そして「中学校の美術教師は、小学校段階でどのような資質や能力を身に付けているのか、まず、よく知る必要がある。

■ 表現活動に関しては、子ども達が能動的に取り組むことが重要である。生徒がやるべきことを明確にし、やりたいことが見つけられ、やりたいことがやれるようにしてやるべきである。(指導要領の美術の目標を基に育成する資質を確認し、)作品の完成のイメージを持つことは大事であるが、あまりにも強く持ち過ぎてしまうと、先生の作らせたい作品を作らせてしまう。生徒の学びのイメージをもって題材をつくる必要がある。

■ 鑑賞活動に関しては中学生の発達段階に応じた美術作品に出合わせ、自分なりの見方や感じ方を広げることが重要である。感じ方や考え方を広げるために、教師から作品の解説をすることも大切である。

■全ての子どもは豊かな存在である。常に学ぶ存在である。このことを念頭において授業づくりをしてください。

 今回の研究会の中でも、様々な授業実践が発表されましたが、それぞれの活動がどのような資質や能力を育成しているのか、常に意識し続けなければならないことを再確認させられるようなお話でした。

■実践発表3 (2日目 午前@)
「小学校の発達特性と造形表現の紹介」
千代田区立九段小学校 主任教諭 竹内ともこ

 この発表では、小学校、低・中・高学年の、それぞれの発達段階に応じて、作品や活動の様子がどのように変化して行くのか、実践事例を通して紹介されました。中学校の教師は、小学校6年間の表現の変化を見る機会がほとんどありませんが、今回、小学生の表現の豊かさに触れるとともに、図工の先生が、子どもの発達段階にどのように対応しようとしているのか、その工夫を感じることができました。

■実践発表4 (2日目 午前A)
「授業実践報告 日本画の画材体験・針金で作る動きのある人物」
町田市立町田第二中学校 主幹教諭 小山一雄

 この発表では、「日本画材料を用いてドローイングを楽しむ活動」と、「アルミの針金を使って動きのある人物を表現する活動」が紹介されました。日本画の材料はとても高価で、中学校で扱うことは非常に稀な材料ですが、それによって表現された作品は非常に美しいものになっていました。また、針金を使った人物は、毎時間行っている人物のクロッキーの効果も感じられ、非常に生き生きとした作品が印象的でした。

 実践発表についての詳しい内容は、日本画プレゼン資料針金での人物プレゼン資料(PDF版)をご覧ください。

 

■実践発表5 (2日目 午前B)
「地域と繋がる地域の素材を生かした題材」
羽村市立羽村第一中学校 教諭 鈴木嶺

 この発表では、「地域の特性を生かしたプロダクトデザインを考える活動」や「ご当地キャラを考えて彫刻に表したりポスターに表したりする活動」、「ご当地カルタを表現する活動」など、地域の特性に焦点を当てて行った様々な実践事例が紹介されました。地域への思いを活動に中心に置くと、生徒は能動的に活動を行うことができるということが感じられる内容でした。

■実践発表6 (2日目 午前C)
「アートの力で世の中の人をHAPPYに!」
町田市立金井中学校 主任教諭 福島淳子

 この発表では、色や形を使って心を豊かにすることをテーマに、「フェルトを使ってコースターをつくる活動」や「自作の蝶を写真作品にする活動」、「絵手紙を描いて地域と交流する活動」など、様々な実践が紹介されました。心温まる表現活動は、人と人との結びつきを促し、世の中をHAPPYにしてくれそうでした。

 この実践発表についての詳しい内容は、プレゼン資料(PDF版)をご覧ください。

 

■実践発表7 (2日目 午後@)
「3年間で120時間、そこで何を実現させるか」
西東京市立田無第一中学校 主任教諭 濱脇みどり

 この発表では、「レポーター人形を使って校内を撮影する活動」や「漢字のある風景を粘土などを使って表現する活動」、「粘土を使って今の自分を表現する活動」など連続的な視点で3年間分の実践事例が紹介されました。中学校生活の3年間でも、学年ごとに発達段階が異なりますが、ここで紹介された活動は、それぞれの感性にフィットするような活動となっていました。中学生が3年間のそれぞれの段階で、どのような状況に置かれているのか、今一度考えてみることが大切だと再認識させられる内容でした。

 この実践発表についての詳しい内容は、プレゼン資料(PDF版)をご覧ください。

 

■実践発表8 (2日目 午後A)
「デザイン領域においての多面的な題材」
葛飾区立立石中学校 主幹教諭 太田幸司

 この発表では、デザイン領域に焦点をあて、太田先生がこれまで実践された「学校アート化プロジェクトとして企画からデザインまで考えさせる活動」や「色を集めた写真集を作成する活動」、「トリックアートを用いてデザインする活動」など、数多くの活動が紹介されました。太田先生は小学校図工の経験もあり、非常に幅広い視点で、デザインによる教育の在り方を紹介する内容でした。

 

 

■アクション会議と研修の振り返り

 アクション会議とは、美術教師一人一人が「2014年までに世論に美術教育の価値を認識してもらうために、今できること」を考える会議です。今回は5〜6人のグループをつくってアイデアを出し合いました。最後に各自ができることを「アクション宣言」としてグループ内で宣言しました。今後、教師は宣言したことを、実行に移し、美術教育の価値を世間に認識してもらわなくてはなりません。

 

 

 

※内容は、研修の記録(PDF)でも紹介されてます。
※都合により、実践発表によっては作品写真や発表資料を掲載できないものもありました。ご了承ください。

文責:足立区立渕江中学校 志手伸圭

 

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