【 主 旨 】
平成24年度から完全実施となる新教育課程においては選択の時間が廃止となり、多くの子どもたちが中学校で美術に触れる時間数が実質的に減少する。また、選択の廃止はそれまでの美術科教員の授業受け持ち時間を減らし、その雇用形態まで変えつつある。
すでに中学校の美術科も非常勤対応が増え、正規の教員も複数校の掛け持ちなど、決して美術を充実させる方向ではない動きを呈している。この影響は確実に子どもたちから学校で美術のダイナミズムに触れる時間を奪っていくことに繋がる。 中学生という時期は芸術に目覚める時期でもあり、さらには自分自身との対峙の中で、生き方を考えるとともに豊かな情操を育むことができる時期でもある。
さて、このような美術への誘いの減少に対し、美術の牽引者たる美術大学が美術教育に対して無策でいる必要はない。武蔵野美術大学は「生きるをつくる、つくるを生きる」を標榜している。よって、この危機的状況に対し、子ども一人一人が美術に触れて自分自身をよりよく生きようとするきっかけを提供しなければならないし、美術を牽引する大学として美術そのものを社会的機能として浸透させていく役割を持つべきであろう。まさに本学ができる社会貢献一つであると考える。
さて、本プロジェクトは、日常の生活空間である「学校」を一時的に非日常の「美術館」にすることで、小・中学生に美術の広い世界を垣間見させる機会を提供し、子どもたちに芸術への関心や、さらには憧れを持つ機会を提供するものである。特に、教育委員会と連携しながら、未来を担う小・中学生を対象とした本企画は、指導要領に示された地域連携や美術館連携に相当し、これからの美術教育のあり方にも影響を与える取り組みになると考えられる。
旅するムサビプロジェクトから派生した本プロジェクトは、中学生のみならず本学学生が美術というコミュニケーション媒体を使って社会と接する機会を提供し、学生自身にもどう生きていくか真剣に考え、大いに成長できる機会となり、ひいては将来の教育を支える教師を育むことにもなる。
学校美術館化計画「ムサビる」とは
●小中学生へ芸術鑑賞の機会を提供(芸術文化教育)
●学生が成長できる機会(中学生とのコミュニケーション)
●美術教育の活性化・地域連携(大学の社会貢献)
●小中学生へ芸術鑑賞の機会を提供(芸術文化教育)
芸術文化振興基本法では第24条に「文化芸術に関する体験学習等文化芸術に関する教育の充実、芸術家等及び文化芸術活動を行う団体による学校における文化芸術活動に対する協力への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。」とある。また、学習指導要領では地域にある美術館との連携が示されている。本取り組みは学校を美術館に見立て、子どもたちに芸術に触れる機会を提供するものである。このことは芸術文化振興基本法を具現化する取り組みである。
●学生が成長できる機会(中学生とのコミュニケーション)
「旅するムサビ」から派生した今回のプロジェクトは学生に大きな学びを提供する。展示などの企画は学生が中心に行い、運営の協議は小中学校教員と、武蔵野美術大学の三澤が加わり三者で検討していく。教職課程を履修する学生にとっては教育実習前の学校経験となり、また中学生とふれあう機会となる。また、学生は作品を制作する、見せる、企画するなどの一連の体験を通して、表現することの意味や美術の社会的役割、可能性などに考えを深め広げていく。そして将来の質の高い教育者を育てることに繋げていく。
●美術教育の活性化・地域連携(大学の社会貢献)
特に東京都の中学校美術は、他府県と比較しても元気がない。このことは複数の教育関係者からよく聞く。その中で、昨年度の「旅するムサビ」は、特に多摩地区に於いて中学校教員のつながりを生み出し、美術教育に向かう教師の姿勢をより意欲的に変えていった。今回の取り組みも、美術教育の枠組みの中で、小中学校でできる美術教育の新たな可能性を示すものであり、東大和から東京都及び全国の美術教育関係者に発信できるプロジェクトになる。また、来年度に企画予定の東京都教員研修センターでの研修の基礎事例にもしていく。
【 概 要 】
東大和市立第二中学校の教室10室を2日間借り武蔵美の学生作品の展示及びワークショップを行う。この作品展示に教育委員会及び東大和市中学校美術教育研究会の協力を得て東大和市の全小中学生,及び所沢市の全中学生に案内を配布し鑑賞してもらう。
■名 称 東大和スクールアートプロジェクト「学校美術館化計画『ムサビる 』」
■期 日 2009年8月8日(土) - 9日(日)9:30〜16:00(搬入搬出は前後1日)
■主 催 東大和スクールアートプロジェクト実行委員会
■後援(予定) 東大和市教育委員会、東京都教育委員会、東京都中学校美術研究会、全国造形教育連盟 他
■協 力 武蔵野美術大学
■内 容 出展を希望する学生の作品を中心に約20〜30点、(8室)東大和市市内の高校美術部生徒作品(1室)、市内中学生生徒作品(1室)、多摩地区小学生作品(廊下等に展示)
■問い合わせ
三澤一実 (武蔵野美術大学教授)
〒187-8505東京都小平市小川町1-736 武蔵野美術大学教職課程研究室
電話/FAX 042-342-9537 mail: kmis@musabi.ac.jp
未至磨明弘(東大和市立第二中学校)
〒207-0014東京都東大和市南街3-60-4
電話042-561-2328 FAX042-590-7029
Mail:hyama2c@m-net.ne.j |