研修報告

研修報告のカテゴリーです。

⑰情報共有

それぞれが得た情報をグループに戻り、共有する時間です。

自分が知らない情報を得ることができるため、相手の話に集中している様子が伺えます。

片づけてしまうのがもったいないぐらいの立派なギャラリーができています。

この後、昼食休憩に入ります。

⑯情報交換・交流会

他のグループの実践事例を共有する時間が始まりました。

気になる作品を巡り、授業者とコミュニケーションを取りつつ、自分の授業に落とし込むためには何が必要になるかをリサーチしています。経験年数に関わらず積極的に情報収集をしているところです。

写真を撮ったり、資料をもらったり、新たな刺激を受けている様子が伺えます。

⑭グループワーク1 生徒作品・実践事例紹介 協議

ファシリテーターが本日の流れを説明し。自己紹介をきっかけに準備した資料を提示しながら実践事例を紹介します。

紙芝居形式(手描きとデジタルが混在)の説明が行われ、生徒作品の展示をするグループや、互いに資料を交換しながら話し合い活動が深まっています。

やはり、実物があることで説明が伝わりやすかったり、実際に触れることで、さらに深い質問をする場面が見受けられました。

座っているだけでなく、実際に展示された作品を回りながら鑑賞するグループも出てきました。

自由度の高い話し合い活動です。タブレット端末をもってきている先生が多いと感じます。ICT機器の活用は着実に進んでいます。

⑬ファシリテーターの紹介です

ファシリテーターの皆さんは校務の合間に定期的に集まり、各自で準備を重ねてこられました。掲載順は写真左側からです。


A:世田谷区立桜ケ丘中学校 松尾英治 先生
B:杉並区立東原中学校 佐々木美緒 先生
C:調布市立第六中学校 本間豊 先生
D:江戸川区立葛西中学校 馬場恵以実 先生

E:東大和市立第一中学校 入門勇樹 先生
F:府中市立浅間中学校 榊原晶子 先生
G:江東区立辰巳中学校 高沢健太郎 先生
H:国分寺市立第一中学校 小林奈央 先生

I:葛飾区立立石中学彩恵 伊達彩恵 先生
J:調布市立第三中学校 荒井千尋 先生
K:国立市立国立第二中学校 長尾菊絵 先生

本日のために定期的に集まる機会をつくり、各自で準備を重ねてこられました。本当にお疲れさまでした。

⑫持ち寄り研修開始 まずは開会の挨拶です

本日は小金井市立小金井第二中学校 橘川小夜 先生の司会で進行します。

まずは東京都美術教育研究会会長 江戸川区立春江中学校 横枕耕史 先生よりの挨拶です。

 本日はたくさん集まっていただきました。美術は各校で一人の教科です。私も教員の頃は他の先生の実践から学ぶ機会を持ちました。本日学んだことを各校に持ち帰り生徒に還元してください。

 また、全校配置ではない教科でもあります。ぜひ経験したことを、各地区にも還元してください。そのための都中美組織でもあります。本日は一日頑張ってください。

次に 副会長の西東京市立田無第二中学校 矢野尊久 校長より開会の言葉です。

コロナ禍で4年ぶりに2本立ての研修が開催できました。

 研修テーマは「なぜ、美術を学ぶのか」です。コロナとGIGAスクール対応で評価についてはしっかりと触れてこなかったのではないでしょうか。「令和の日本型学校教育(答申)」におけるウェルビーイング は美術と親和性が高いです。生徒のためにも本日はしっかりと学んでもらいたいです。

次に第3ブロック大会の案内を杉並区立松ノ木中学校 渋谷里美 校長先生からしていただきました 。

 第3ブロック大会を2月7日に実施します。私自身は教師経験で3つの地区にしか回っていません。だからこそ他の地区の実践を学ぶ機会は何より大切だと感じます。ぜひ第3ブロック大会に参加をお願いします。

最後に本研修の経緯について、杉並区立西宮中学校 猪口正和 先生が行いました(内容は後ほどアップします)。

 本研修は平成26年に行った墨田区での夏季研修大会を少しずつかたちを変え継続しています。生徒に身につけさせたい資質・能力が育成できているのか、作品を通して生徒の活動の様子をイメージしながら協議し授業改善につなげていきます。

 また午後の部で行う「ブロック大会授業発表者の指導案検討」は令和元年の第7ブロック大会に際してよりよい実践発表となるように検討したことが始まりです。

 今年度の第3ブロック大会のテーマ「なぜ、美術を学ぶのか」に照らし、より生徒の学びを深めるために皆さんと知恵を出し合っていきましょう。

 本研修での学びが子供たちの未来社会を切り開くための資質・能力の育成につながるようにと願っています。

3⃣鑑賞活動を行うにあたり講義が行われました

国立西洋美術館 酒井敦子さまより講義をいただきました。以下その内容を要約して掲載させていただきます。

本日は、暑い中、研修お疲れ様です。研修の場として当館を選んでいただき、また本日お越しいただき、ありがとうございます。
本日の研修では「対話による鑑賞」を経験し、皆さんで実際にやってみるということをお聞きしていますので、今日は美術館側の立場で対話によるギャラリートークについて、お話ししたいと思います。

対話型鑑賞は、1990年代にVisual Thinking Strategies(VTS)が日本に紹介されたことに端を発し、日本の美術館でも広く行われるようになりました。日本の美術館教育の潮流を概観しながら、美術館において対話型鑑賞がどのように受け入れられ、展開されてきたかを見ていきたいと思います。

1970年代から80年代にかけて、美術館の建設ブームに伴い、講堂や実技室など教育活動に使われる空間を有した美術館も多く建設され、その中で教育普及活動に可能性を見出し、積極的に関わる学芸員が現れました。様々な試みの中には、後に「ワークショップ」と呼ばれる活動も含まれます。80年代にその呼称が使われ始め、その内容も言語化されていきます。今ではワークショップという言葉は、教育、ビジネスの現場でも用いられ、説明が一方的な講義と対比して、参加者が主体的に参加する学びの場、その手法の呼称として定着していますが、美術館においては実技講座だけでなく、展示作品理解への様々なアプローチを含むもの、美術そのものの本質を問うもの、美術を通じて参加者自身の日常生活に新たな視点で向き合う活動など、様々な試みがなされています。対話型鑑賞もワークショップの一つだと言う博物館教育研究者もいます。

1990年代になってニューヨーク近代美術館で開発されたVTSが紹介されます。1990年代~2000年代にかけては、学習指導要領にも美術館の活用、連携が明記され学校教育との連携が促進する中、鑑賞教育の研究も盛んにおこなわれるようになりました。国立西洋美術館においても2008年から東京都中学校美術館教育研究会との研修が始まり、国立美術館の「美術館を活用した鑑賞教育の充実のための指導者研修」のような全国規模の研修も2006年からほぼ毎年実施されています。

さて、そもそもVTSというのはどういったものなのでしょう。

  • 教師は「ファシリテーター」として、「作品をよく見る」、「観察した物事について発言する」、「意見の根拠を示す」、「他の人の意見をよく聴いて考える」、「話し合い、さまざまな解釈の可能性について考える」ことを促す。
  • これらを達成するための3つの問い:「この作品の中で、どんな出来事が起きているでしょうか?」「作品のどこからそう思いましたか?」「もっと発見はありますか?」
  • 発言の受け取り:的確な言いかえ(パラフレーズ)、発言同士をつなげる(リンク)、情報を与えることも発言を訂正することもしない。

フィリップ・ヤノウィン(京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センター訳)『どこからそう思う?学力を伸ばす美術鑑賞 ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ』淡交社、2015年

現在、MoMAのホームページではVTSではない形での授業の提案の動画が掲載されています。動画「作品を使った授業のための5つのコツ」(5 Tips for Teaching with Works of Art)では以下のことが提案されています。

  • はい、いいえでは答えられない開かれた質問(Open-ended questions)をすること
  • 情報は生徒の反応を見ながら小出しにすること(Layer Information)
  • 書くこと、描くこと、もしくはポーズをとるなどの身体性を伴う活動を取り入れること(Incorporate Activities)
  • 生徒の個人的な経験、情報などと、作品との間に関連性をもたせること(Make Connections)
  • 振り返り(Reflect)

https://www.youtube.com/watch?v=ONPYKR8jNn8&list=PLfYVzk0sNiGHwRmCRKWxEsXTJ4quPQeN9&index=7  (2023年6月28日取得)

対話を介して、参加者を主体的に作品に向かわせ、自身の目で観察し、それらを根拠に解釈し、他者の意見に触れることで自身の考えを再検討および深化させると言う目的は共有されますが、そのアプローチは様々です。How toに固執するのではなく、その目的を見失わないことが大切なのではないでしょうか。

国立西洋美術館でも、学校団体に向けてVTSを参考に、参加する子どもたちの自主性を尊重し、作品をじっくり見ることを手助けするギャラリートーク「スクール・ギャラリートーク」を行っています。その他「ファミリープログラム どようびじゅつ」、「版画熟覧プログラム」、「視覚に障害のある方のためのギャラリートーク」、「手話通訳付きギャラリートーク」など様々なプログラムで対話型鑑賞を部分的に取り入れています。

2010年代以降、特に後半は、オリンピック・パラリンピック準備期間でもあり障害者差別解消法が施行されるなど、社会包摂の概念が以前に増して強く認識されるようになったといえます。2017年に制定された文化芸術基本法にも「国民がその年齢、障害の有無、経済的な状況又は居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない」と謳われています。対話による鑑賞においては、言語力、思考力が養われると言われていますが、同時に他者の意見を「聴く」ことで、共感力や他者を寛容する力が培われることも期待されています。お互いの違いを尊重し共生していく社会を目指す中で、必要な力と言えるのではないでしょうか。