令和元年 夏季研修会1日目

令和元年度 夏季研修会1日目 美術館研修
美術館を活用した鑑賞教育研修
  
研修のねらい:美術館を活用した対話による鑑賞を通して、鑑賞の能力を高めるための指導スキルアップを図る。
 
期日:令和元年8月5日(月) 9:30 ~ 16:30
 
本研修は、会場を東京都現代美術館にお願いし、東京都教職員研修センターと連携しての実施となりました。連日猛暑が続く中、66名の方に参加していただきました。2019.08.05-01
 
 

■会次第
 

1.開会 (9:30~)
2.講義 (9:45~10:30)
3.グループワーク「ギャラリートーク体験」「プラン作成」
   (10:45~12:30)
4.中学生とのギャラリートーク (13:30~15:00)
5.ファシリテーター経験を通してのグループでの振り返り
   (15:00~15:20)
6.グループからの発表と今後の授業に生かす力の共有
   (15:20~15:40)
7.指導講評及び講義「これからの鑑賞教育と美術館の連携」
   (16:00~16:30)
8.閉会 (16:30)

 
1. 開会 (9:30)
〇都中美 あいさつ
東京都中学校美術教育研究会会長
町田市立薬師中学校 中村 伊佐夫 先生
 
〇都中美の研修について
東京都中学校美術教育研究会研究担当
西東京市立明保中学校長 矢野 尊久 先生
 
〇研究の意図
世田谷区立奥沢中学校副校長 三浦 悦子 先生
 
 
2. 講義 (9:45~10:30) 
「ギャラリートークについて」
東京都現代美術館 教育普及係長 学芸員 郷 泰典 氏
 2019.08.05-02
 
1 現代美術館の鑑賞活動
2 ギャラリートークについて
3 「対話型鑑賞」と「対話」による鑑賞
4 鑑賞の深め方と広げ方
 
 
3. グループワーク「ギャラリートーク体験」「プラン作成」
 
 66名の参加者が11のグループに分かれ、都中美ファシリテーターが作成したトークプランを元にギャラリートークを体験しました。その後グループごとに、どのような流れでギャラリートークを進めるのが良いか協議し、参加者ごとに自身のトークプランを作成しました。参加者が時間をかけて考え、互いにトークとして試してみることで、午後の中学生とのトークのイメージを深めました。
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4.グループワーク「中学生とのギャラリートーク」
 
グループワークで作成したトークプランを元に都内の8中学校から来館した63名の中学生とギャラリートークを行いました。ほとんどの生徒が現代美術館に初めて来館したとのことで、最初は少々緊張した様子でした。しかし作品を鑑賞し、ファシリテーターやグループの仲間と話すうちに笑顔も増え、生き生きとしたやりとりが各作品の前で次々と生まれました。
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5. ファシリテーター経験を通してのグループでの振り返り
 (15:00~15:20)
 
 
6. グループからの発表と今後の授業に生かす力の共有
 (15:20~15:40)
 各グループが中学生とのギャラリートークの振り返りを作品前で行い、互いに発見したり気づいたりしたことを伝えました。その後講堂に移動し、グループごとにこれからの授業に生かす力について発表し、共有しました。
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 また現代美術館学芸員の郷氏から、「今回のような大規模且つ同時多発的な鑑賞は、教員と生徒が共に日頃気付かない驚きや楽しみ、発見を一気に体験できる研修だったと思う。生徒が自主的に視点を変え、上から、横からと鑑賞する姿もあった。非常に活発に良い活動ができていたように思う。学校ではポスターや生徒作品、日常にあるものの良さや美しさを見つける鑑賞活動も期待できる。夏休み中、ぜひ美術部の活動などにも鑑賞を取り入れていただければ幸いです。」とのお話がありました。
 
 
7. 指導講評及び講義「これからの鑑賞教育と美術館の連携」
(16:00~16:30)
 2019.08.05-10
中村 一哉 先生
 
 東京都現代美術館、改修後の贅沢な環境で生徒の活動、先生方の研修が行えたことはとても素晴らしいこと。研修のねらいは対話による鑑賞の指導力向上であるが、授業における鑑賞の充実について話をしたい。話の流れは次の3点である。
  ① 対話型鑑賞に関するこれまでの都中美の研修の振り返り
  ② 本日の研修から学ぶ鑑賞指導のあり方
  ③ これからの鑑賞指導の充実に向けて
 平成28年から午前に先生方の鑑賞トーク、午後に生徒の鑑賞ギャラリートークを行う形式が定着した。新しい学習指導要領では、よさや美しさを味わう鑑賞から、見方や感じ方を広げ、深め、思考力、判断力、表現力等を育てることへと改善されている。鑑賞の充実には、自分の価値意識をもって批評しあったりするなどの対話的な学びが重要であり、感性や想像力をはたらかせて、自分としての意味や価値をつくりだすことが求められる。
 今回の研修では、これまでの日本の近代の作品を中心とした鑑賞とは異なり、現代作家の作品の鑑賞が中心である。その点で、作品自体や美術館の展示環境そのものが鑑賞の対象となる。しかし、鑑賞の学びの基本は同じであり、生徒の発言に対する根拠を問いかけるなど、対話による鑑賞の手法に変化があるものではない。そこで重要となるのは、学習指導要領にも示されているように「造形的な視点で捉える視点」である。それは造形活動や鑑賞の活動を、新学習指導要領にしめされた〔共通事項〕の視点から充実させていくことと言い換えられる。
 今回のトークの中でも、そのような造形的な視点から見方や感じ方を深めるような鑑賞指導が随所で展開されていた。そうした造形的な視点を意識した問いかけや働きかけによる対話を練っていくことで、生徒が新たな意味や価値を見出していく鑑賞の授業を構築していく必要がある。
 そのためにも、これからの学習指導要領の全面実施に向けて、移行措置期間において〔共通事項〕の理解について研修を深めていくことが望まれる。例えば、鑑賞の指導においては、その作品を鑑賞することで、どのような造形的な視点が育まれるのかを明確にしていくような整理を行い、指導過程の改善につなげていくことが必要だと思われる。
 美術の鑑賞が他教科でも学習内容となっていることを踏まえて、思考力、判断力、表現力等の資質・能力に位置付けられた美術の鑑賞で育む指導内容を整理し、明確なねらいに基づく鑑賞の指導を展開していくことが極めて重要と考える。
本日の研修は、現代美術を鑑賞題材としたことで、改めて鑑賞のあり方を見つめ直し、考え直すよい機会となった有意義な研修であった。
 
 
8. 閉会 (16:30)
 
謝辞 東京都中学校美術教育研究会研究担当
板橋区板橋第一立中学校長 増田 祐子 先生
 
2019.08.05-11