○立案
低学年中学年と同様に高学年の造形遊びにおいてもどのような材料を取りあげるかは重要な要素である。高学年で取り扱う材料は、多様な活動、発見が見込まれるものであることが望ましい。なぜなら高学年の活動は「わたしと材料」といった関係だけでなく「わたしと、材料と、友だちと、周りの様子と」といったあらゆる要素が絡まっていくことがより子どもたちのもつ資質や能力の発揮に迫ることができるからである。
スズランテープは線材としては一般的であり、これまでも多くの造形遊びの実践がなされてきた。スズランテープを校庭いっぱいに張りめぐらせる、遊具に絡ませるなどの活動が代表的であろう。しかし、主に中学年の実践であり高学年ではあまり実践されていない。それはこのようなダイナミックな活動と高学年の造形遊びのねらいが合致しないと思われるからである。
○高学年でスズランテープを取り扱うことに際して配慮した点
高学年であまり使われないスズランテープを材料にするにあたって次の点を考えた。
・スズランテープの可能性を追求する時間をどのように保証するか。
・スズランテープのよさやおもしろさを子どもなりに実感するにはどうしたらいいか。
以上のことに対し考えた手立ては次の4点である。
・スズランテープの長さを1m程度に切る。
・色数を増やす。
・スズランテープのよさを見つける時間を保証する。
・場の設定として教室の中央に山積みにしておく。
スズランテープをロールのまま子どもたちに渡しても、長く伸ばすことに終始してしまいスズランテープのよさを発見するに至らないことが多い。そこで、結ぶ、つなぐの行為から様々な発見があるのではないかという考えから1m程度の長さに裁断した。大胆に山盛りに積んだのは子どもたちが始めて会う教師にあわせた(遠慮した)活動にならにように「材料に関わる本気の楽しさ」を感じてもらいたいという意図があった。この点をおろそかにしては造形遊びにならないと強く考えた。
○前時までの履歴
材料と関わる高学年の姿
1mに切られたスズランテープをつなぐことは子どもたちにとって心を開き材料と関わる活動になった。スズランテープに体を埋め結んでいく姿はその象徴であろう。高学年といえども頭で考えたことを表すだけでは材料と深く関わることにならない。発想構想することは自分の頭の中にあることを引き出すのではなく材料との身体的なかかわりを通して思いつくことが多い。
また、発想構想するという点において友人との関わりや周りの状況に気付くことも重要な要素である。
1時間目にはこちらの予想に反して色々なつなぎ方をするというよりどんどん長くつなぐ活動が多く見られた。これは机を取り除いた空間に山積みに置かれたスズランテープの量がどんどんつなぐ活動を誘発したからであろう。もう少しスズランテープの量が少なければ、活動場所に机があれば結び方に着目するなど工夫した活動も生まれただろう。しかし、造形遊びでは材料に心を開きその活動に浸りきらなければ造形遊びの前提からはずれてしまう。子どもにゆだね、教師がハンドリングできない要素がなければ活動そのものの意味がなくなってしまうという信念が私の中にある。その意味では、十分であり必要な活動であった。
子どもたちとともに出会い、余裕の生まれた2時間目は前時に身体的に味わったスズランテープそのもののよさを子どもが自覚する時間になった。環境レイアウトも机を配置し、スズランテープも色ごとに並べ、子どもが色に着目し、選びたくなるように配慮した。机があり、好きな色を選ぶという前提を加えただけで材料とのかかわりが前時とは全く違った。子どもの活動と環境構成は密接なかかわりがあることを再認識した。発揮される資質や能力の見取りも違い、1時は五感を駆使して直感的に行為が生まれ発想することが主であったことに対し、2時は児童の意図とスズランテープの見えの変化から発想が広がっていくことが主であったと考える。材料のよさを追求したあとに活動したい場所を選んだ。そして、本時を迎える。
1時 |
■ スズランテープと出会う |
T:スズランテープをつなげて思いついたことをしてみよう。
S:どんどんつなげられるぞ。
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・山積みにされたスズランテープから、活動することのおもしろさを感じ活動に関心をもつ。
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2時 |
■ スズランテープの色々な可能性を楽しみ、そのよさが生きる場所を探す |
T:好きな色を4色選んでどんなことができるか探してみよう。
S:裂くことができるよ。
S:カシャカシャ音がするよ。
S:透明で透けて見えるよ。
T:見つけた面白さが生きる場所を探してみよう。
S:結ぶ場所がたくさんあるところがいいな。
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・色を選ぶことから色にも目を向ける。
・結ぶつなぐを中心にスズランテープに関わる中でいろいろな可能性をみつけ発想を広げる。
・場所のよさを認めながらあらゆる状況を考慮して決定する。
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3時
本時 |
■ 表したい場所でスズランテープをつないでいきながら活動を広げる |
T:スズランテープのみつけたよさを生かしながら気に入った場所につないで景色を変えてみよう。
S:風の流れを活かしてみよう。
S:この場所にこの色が合うね。
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・刻々と変化する活動を見取り声賭けをしていく。
・活動のよさを味わう。
・場所のよさを感じながら発想を広げ、よさが生きるように工夫しながら表す。
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